毎日新聞に掲載いただきました。
コミュニティフリッジ泉佐野の内部の様子、
ご支援いただいている食材などについても詳しくお伝えいただきました。
【紙面】
1人親や低所得などで困難を抱える家庭が24時間食品を取りに行ける「コミュニティフリッジ(公共の冷蔵庫)」が府内でもひろがりつつある。企業などから寄付された食品を団体や個人に無償で提供するフードバンクが全国で普及する中、当事者が、より使用しやすい支援として注目されている。【斎藤朋恵】
現場から
「子どもたちにおなかおっぱいになってもらい、大きな夢を抱ける助けにしたい」。泉佐野市の社会福祉センター(同市中庄)の敷地内に9月「コミュニティフリッジ泉佐野」が開設され、運営するNPO法人「キリンこども応援団」(同市鶴原)の水取博隆代表(41)はこう語った。同法人によると、コミュニティフリッジの開設は全国10例目。府内では寝屋川市、堺市に続き3例目で、都道府県単位で全国最多となった。
10平方メートル弱のプレハブ倉庫の中には常温で保存できる米やレトルト食品、冷蔵庫に入れられたヨーグルトや野菜類の他、日用品や文房具も並ぶ。利用希望者はインターネット上などで登録すると、スマートフォンのアプリを使って倉庫のカギをあけられるようになる。受け取りは24時間354日可能で利用回数の制限はなし。ただし、持ち帰る物品の数量をバーコードで読み込み、いつ誰が何を持ち帰ったかを支援者が把握できる。持ち帰る回数が頻繁な家庭には詳しく事情を聴き、必要に応じて支援につなげる仕組みだ。
キリンこども応援団は、泉佐野市などの18歳以下の子育て世帯を対象に2021年夏から月1回、フードバンクなどで集めた食材を市内の商業施設で配る活動を続けていた。新型コロナ禍や物価高騰が家計に打撃を与える中、毎月150世帯の事前登録が開始20分ほどで埋まる人気だったが課題もあった。解説が月に一度と限られるため受取りを諦める家庭もあり、配布する物も1世帯ごとの数が決まっていて家庭環境に応じた対応ができなかったのだ。「より継続的に、必要な人に使ってほしい」。思いついたのが、全国に広まりつつあるコミュニティフリッジだった。
9月に開設すると10日で23世帯が登録し、利用希望の問い合わせも相次いでいる。利用者からは「いつもなら買わないものを持って帰り、子どももすごく喜んだ」など好評だという。
運営を続けるための最大の課題は費用だ。食品を保管するため、特に暑い時期は冷房が必須。他にもフードバンクへの寄付で足りない配布物の購入や管理費などで想定される月20万ほどのランニングコストは法人への寄付でまかなうという。
利用者には、学習支援など「未来」につながる支援も提供する予定だ。水取代表は「継続運営に地域や企業、個人からの理解や支援が不可欠。貧困の連鎖を止めるために多くのみなさんにサポートいただきたい」と話す。利用や寄付の問い合わせは同法人(072・496・8372)
左上写真:様々な食材を選ぶことができる「コミュニティフリッジ泉佐野」
右写真:利用者は持ち帰る食品をバーコードで読み取り、登録する